「フランス語は発音が難しい」と思っている人は多いと思います。同じラテン語族のイタリア語やスペイン語に比べると、フランス語の発音は日本人にとって確かに難しいもの。辞書に書いてあるカタカナ表記をそのまま読んでも、通じないことがしばしばあります。日本人の発音に慣れた仏人講師には通じても、現地に行くと「...?」という顔をされてしまうことも。
その一番の原因は「母音」(voyelles)です。
フランス語にはなんと
12個もの母音があります。そしてそのほとんどが、日本語のア・イ・ウ・エ・オと似ていません。
中でも難しいのが円形前方母音(voyelles antérieures arrondies)といわれるもので、アルファベの「E」や「U」の音が、これに当たります。この音は、「口を丸めたまま舌を前に出す」という、日本語にはない発音の仕方で音を出します。
「
heure」(時間)や「
seul」(一人ぼっちの)の発音がうまくできない人は、このタイプの母音につまづいているのです。
例えば「
europe」(ヨーロッパ)という単語。仏和辞典を見ると「ウーロップ」と表記してあります。でもこの「ウー」は日本語の「ウー」とまったく違う、鋭く緊張した音なのです。(唇を前に突き出し、舌の先を下の歯の裏につけて発声してみてください)
「そんなにたくさんの音、どうやって覚えればいいの...?」と思われるかもしれません。 幼年期をすぎてから新らしい音素を獲得するのは、確かに困難です。
游藝舎の発音レッスンでは、日本人にも簡単に出せる「i」の音からはじめることにしています。この音を起点にして、口を開けたり舌を動かしたりして他の音を作っていくと、比較的簡単に、正確な音が出せるようになります。あとは表を見ながら反復練習。意識しなくても音が出せるように、口の筋肉に覚えさせていきます。そして「
まぎらわしい母音」の入った短い単語で、実践練習をします。
12個もある母音ですが、別の似た母音で置きかえられるものもあります。現代のフランス語は、むかしより「ちょっとだけ」簡単になっているのです。また、それほど正確に発音できなくても意思疎通はなんとかなる、という母音もあります。
そのようにして母音の数を減らしていくと、「通じるフランス語」であるために必要な母音は、いくつになるでしょうか? 游藝舎は7個(できれば8個)だと考えています。渡仏が目前に迫った方や、短い時間で発音を直したいという方は、まずこの7個の母音を練習してみてはいかがでしょう。そこから、よりきれいな発音を目指していけばいいのです。
フランス人が発音を教えると、音はネイティブだけど、子供の頃に自然と身に付いたものなので巧く説明できない、というジレンマがあります。日本人が日本語の発音を論理的に説明できないのと同じです。音声学を勉強した日本語を話せるフランス人か、音声学を勉強した発音の上手な日本人に教えてもらうのが理想です。
ひとりで勉強したい方には、
この本がおすすめです。発音の仕方が絵入りで詳しくのっています。自分の発音を録音して、付録のCDと比べてみてはどうでしょう。ただ、母音から順番にすべて羅列してあるので、最初は少し圧倒されるかもしれません。